独立行政法人化に反対意見が相次ぐ


 県立病院の地方独立行政法人への1本化移行と県立病院経営に市町村の参画を求めることを提言した「県立病院のあり方に関する基本構想」(案)の説明会が沖縄県福祉保険部の主催で1月2日(月)午後7時から、中央公民館2階研修室で開かれ、100人近い市民や医師、医療現場の職員等が説明会に参加し、9時終了予定の時間を延長して10時過ぎまで活発な意見が飛び交いました。
 会場入り口には、医療現場の職員が「地域医療を守り医療提供体制確保を求める」署名を訴えており、心強く感じました。
 県の担当者は「県立病院は民間病院では対応が困難な医療を提供し、充実させ将来にわたって維持、発展させる」 「県立病院は、資金不足のため、経営破綻の窮地にある。一時借入金の残高が都道府県病院事業でワースト1であり、医療の質が低下し、優秀な医師や看護師の離職を招く可能性も高い」 「財政負担を抑制しつつ、病院事業経営の健全化を図り、効率的で継続的な医療提供体制を確保していく」など基本構想案について説明しました。
 それに対して、医師の真喜屋 浩氏は、宮古病院長を務めた経験を語り「宮古病院は他の病院と切り離して公立病院として存続させるべき」と主張しました。
 ある男性は「独立行政法人化して赤字にならないか、現場の声を取り入れた会議を開けるようになるのか」と質問。
 県担当者は「赤字解消ではない、組織から独立することにより柔軟な運営が可能になる。意識改革が必要」と答えました。
 男性M氏は「独立行政法人化の方向が決まっているので理解をというのか。赤字の原因は何か。(県の一般会計からの)繰り入れは他府県と比べてどうか」と質問。
 県側は「案であり、これから答申する。1病床あたりの繰り出しは全国で35番目で、1人あたりの繰り出しは全国で6番目となっている」と答えました。
 医師のS氏は「2005年に法人化された東大病院の院長が『(独立行政法人化は)間違いだった。大学改革でもなく、医療改革でもなく、国の財政負担を軽くしようという財政改革だった。各大学病院は溺死寸前ではないか』といっている。月間文芸春秋2月号に掲載されている」との声を紹介し、産科医としての実体験を語って、「(独立行政法人化して経営が)うまくいかないとき、公的な救済措置はあるのか。(病院)事業局の再建計画による構想の見直しはあるのか」と質問しました。県の担当職員は「言及できない」と答えました。
 看護師の0氏は「今、病院の現場では、『忙しいですね。すみませんが…』が合言葉になっている。(独立行政法人すると)7対1(患者7人に看護師1人)というと聞こえが良い、具体的に示してほしい。『命を守るために宮古病院はこうします』と具体的にー」。ある看護師は「休みなく働き尽くめ、正職員が少ない、格差を感じる。現場の声を上に届けてほしい」と訴えました。
 男性S氏は「独立行政法人化すれば(職員を)増員できるというが、これまで要求してもできなかったことをことをいう資格はない。県が繰り入れをやっていれば赤字はなかった。破綻寸前という資格はない」と指摘しました。
 その指摘に県側は「条例の縛りがなくなる。繰り入れしてこなかった
というのはあたらない」と反論しました。
 女性保育士は「(このようなことは)だれも知らない。こんな狭い場所で討論して良いのか。多良間村も伊良部の人も船がないので来れないもっと時間を作って説明すべきだ」と要求。
 県の担当職員は、「もっと広く(説明)したら良いが限界があるインターネットでも宮古支庁や宮古病院でも基本構想を見ることができるので意見を提出してほしい」と答えました。
 私は、県立病院のあり方検討部会の構成員4人が法人で働く人で法人化を進める立場に立つ人で、県立病院出身者が恩河尚清前宮古病院院長1人だけで、当事者を排除していることに疑問を感じ「なぜ、医療現場を知らない福祉部が進めるのか、病院事業局が進めるべきではないか」と質問しました。
 県側は、「短期の運営は事業局がやり、将来的な検討は福祉部で進めるという役割分担がある。委員については、県職員は委員になれないという内規があり外部の方で構成している」と答えました。



■ 県立病院の移転新築の課題とも関連する重要な問題です。 
 説明資料で、地方独立行政法人化を決議した理由として、「経営の自立性」をあげ、「独法化により地方自治制度の制約から解放され、経営の自立性が高まる。意思決定は法人で完結することから、経営責任も明確化する」と説明しています。
 公立病院の目的は、「経済性」の発揮にあるのではなく、税が投入されている公立病院に相応しい良質な医療を提供することにあります。
 議論の前提が「赤字問題」で、「公共性の確保」をどうするのかの議論は不在です。「独立行政法人化」で経営改善が図られないとき、次は「公設民営化」であり、それでも改善に向かわなければ「民間移譲」になるのは目に見えています。
 安心して暮らしていける宮古であり続けるために、「医療をコスト」と位置づける国の医療のあり方の根本を改めていかなければなりません。収益と結びつかないものが多い離島の「地域医療に貢献」する県立病院のはたしてきた役割とこれからはたすべき役割が「独立行政法人化」では保障されません。今、宮古の全住民が立ち上がるときです!