シンポジウム。

13日午後、宮古島市中央公民館で、「大学人九条の会沖縄」「みやこ九条の会」共催による「憲法を守り、どう生かしていくか」〜憲法九条と自衛隊を考える〜と題するシンポジウムが開催されました。
バイクを飛ばして会場へ行きました。90人という、思ったより多くの人の参加に驚きました。


 ■ 基調報告


 最初に琉球大学法科大学院の高良鉄美教授が「憲法九条の構造力」と題して基調報告をしました。
帽子姿で演題に立った高良教授が「帽子と憲法」について、「1995年から帽子をかぶるようになって10年余りになります。憲法改正を防止する帽子ですと話しています」と笑いを誘い、「帝国議会の傍聴規則も国会の傍聴規則も同じです。帽子、外とう、えり巻、かさ、杖類の禁止をしているが、高齢化社会の進行する中でえり巻も杖もダメというのはおかしい、最近杖は認められる方向にある」と話しました。
 憲法が制定されるまでの歴史的背景やについて、「日本の憲法前文には他国の憲法にない『人類』『地上=(世界)』の視点がある。沖縄は最後の世界大戦で最後の地上戦があった普通でない戦争体験をしている。さらに、広島・長崎への原爆投下という普通でない戦争体験をしている。沖縄戦では1箇月で食料がなくなるという、恐怖と欠乏の日々を送った。戦争が日本に、世界にもたらしたものはもっと深いところにある人類共通の根本問題として戦力を『持たない』『持たせない』国策を推進するのではなくて国策を縛るものとして制定された」とF・ルーズベルト大統領の「四つの自由」宣言、明治憲法の例をあげながら話し、衆議院帝国憲法改正委員会によって行われた付帯決議を紹介して「今こそ付帯決議『進んで地球表面より一切の戦争を駆逐せんとする高遠な理想を表明したものである』『前記の理想を達成するためには、国民を挙げて絶対の努力をなさねばならぬ。吾等は政府が国民の総意を体し熱情と精力とを傾倒して―。』を発揮すべき、押しつけ憲法というが、明治憲法制定の時からすでに民間案として自由・自治が謳われていたが政府がそれを無視した。現憲法制定にあたりGHQは民間案を支持したものである。今の憲法改正案は国策の推進のために変更しようとしている」と指摘しました。憲法九条の構造について、「人間の尊厳を保障し生きる基礎的環境を作る。戦争をしないことによる国民の保護武力によらない紛争解決。国が軍隊による戦争をしないこと」を挙げ、9条のシステムについて憲法13条、18条、25条、29条その他の条項を具体的に挙げて解明し「憲法の原理として、個人・人間の尊厳、国民主権、平和主義、基本的人権は性質を決めるDNA、ひとつが崩れるとなしくずしになってしまう」と強調しました。
 現状について、具体的に「1962年12月20日の嘉手納村民家米軍墜落事件、沖国大米軍ヘリ墜落現場の状況、米軍の戦争訓練、低空飛行、アメリカの要求による憲法改正教育基本法改正、憲法改正手続法、集団的自衛権等)と、県民の運動(復帰前の土地を守る4原則貫徹県民大会1956・7・28 10万人、1995年10月21日県民総決起大会8万5千人、2007年9月29日の教科書検定撤回要求県民大会11万人)を具体的に挙げて、「戦争は恐怖と欠乏がひどくなると始まる。憲法の21世紀的見地『恐怖と欠乏から免れ―』を力を合わせてなくしていくことが大きな課題であり、これを解消していくことで平和ということを実感できる」結びました。


 ■ パネルデイスカッション



 10分間の休憩後、パネルデイスカッションに入り宮古九条の会三浦晴彦事務局長がコーディネーターを努め、大学人九条の会沖縄代表の高良鉄美教授、同会の徳田博人事務局長、宮古九条の会仲宗根將二代表世話人がそれぞれパネリストとして憲法について意見を述べました。
 徳田氏は、「行政法憲法の具体化法です。憲法をくらしに生かす地方自治体に格差と貧困があってはいけない、自治体の役割は平和、不安、生活上の問題を解決することが大切、(宮古島市は)総合計画で『心つなぐ結いの島』結いの大切さを書ける力のある自治体、全日本トライアスロン大会、世界発の地下ダム事業の導入等、他の自治体から見ると羨ましい、そこへ自衛隊を入れるとどうなるか、補助金が増えて財政的に豊かになるが、人権侵害や公害、有事の際のターゲットになる可能性というリスクを負い(国の)政策としての補助金に(操られ)自治体の目ざす街づくり計画が大きく狂って自衛隊優先になり、市民の対立を煽ることになってしまう」と具体的に北海道の千歳市の事例を挙げて「豊田市のように選挙で企業が市長を決める自治体もあるが、自衛隊が市長を決めることになり、国の政策で自治体がコロコロ変わることになってしまう、宮古の力の源泉を大切にしてほしい」と述べました。
 仲宗根將二氏は「私は小学校を出ていない、教育勅語を丸暗記させられ『大きくなったら何になる』と問われると『はい、兵隊さんになります』と答える軍国少年になっていた。皇民化教育によって日清、日露、15年戦争に国民をかりたてた。祖国復帰運動が大きくなった直後、下地島空港建設計画が持ち上がったが、(住民の抵抗)で屋良覚え書きを生み出すまでに至った教訓は、機会あるごとに想起すべき大切なこと、軍事にかかわる小さな動きに敏感に動く必要がある。憲法を生かす勇気を持つこと戦争と平和についての話題が日常的になるような取り組みが必要。戦争の原因になるものを取り除く日常的な指摘をしていきたい」とのべました。
 高良氏は「『宮古島はいいねえ〜』といっている人がいるそれは『軍事上魅力的な島』ということ、安全保障の問題の出所はすべて米軍が要請していること、安保・地位協定は復帰前の日本とアメリカの約束。地方自治について明治政府が『日本はなぜ勝ったか、地方自治がすばらしいから、天皇の一声が日本の隅々まで行き届く』ということをいっているが、今の憲法における真の地方自治は国の強い力を(国の悪い政策を)住民生活の安定のためにブロックすること、『与那国島はいいねえ〜』という共通はアメリカの利益だけで、住民のことは頭にない」と強調。さらに温泉街で知られる湯布院の事例を挙げ、「300万人の観光客の来る街として自衛隊をなくして行きたいが、しがらみによって目標がずれていく、産業も変化する。湾岸戦争で、スイスから武器が供給された時、『これでスイスはおしまいだ』という声があがった。スイスは中立国という誇りをもっている。今、日本にしかできない仕事、60年前の(衆議院)議会の精神の発揮が必要」と「街づくりの主人公は住民が主役になること」と訴えました。